これまで受け継がれてきた日本人の美しい感性を、素材からこだわり次世代に少しでも伝えていけないだろうかと考えています。

「表具は衣装である・・」
表具を「衣装」に例えることは、その役割を説明する時に頻繁に使われる表現であります。それは表具が、書画の持ち味を引き出す装飾としての役割を持つとともに、破損や、常に変化する外気から身を守る、保護としての役割も兼ね備えているということであります。特に、日本の絵画は、和紙や絹という繊細な素材の上に描かれることが主ですので、保存や鑑賞のために安定した形態にしておく必要があります。






古い書画-掛軸-の修理をしていると、先人の仕事に感心させられることがあります。作品の土台である絹や紙は繊細であって強く、そのまわりの裂地-金襴・緞子・無地-、作品や裂地の裏打ち、軸先、紐、桐箱、それぞれに職人の美しい感性とエネルギーを感じます。
床の間のない住宅が増え、そして日本画も額装することが前提にある作品が多い「今」、それらを作ることが難しいところまできているように思います。

私達は、材料も大切にして表具することで、これまで受け継がれてきた日本人の美しい感性を、次世代に少しでも伝えていけないだろうかと考えています。又伝統的なものを残すために、新しい工夫も必要だと考えています。そして、書画を制作される人達が表現しようとされている、その人独自の「今」を数寄和は大切にしたいと思います。慌ただしい現代の生活の中で、伝統の魅力を一人でも多くの方に関心を持って頂く為、私達は作品を飾る現代的な空間にも美しく映える表具をご提案していきたいと考えています。



清野圭一「白梅図」






表具の基本となる裏打ちという仕事。作品の裏側から本紙を『保護』し、また作品の『保存』の為に欠かせない技術です。また『鑑賞』に適した形にするために、回りに紙や裂を補って掛軸や巻物にしたり木製の骨組みに幾重もの紙を貼り合わせてつくった下地に作品を貼り付ける屏風としたりして、さらに安定した、保存と鑑賞が同時に可能な形態になります。

(1)本紙(作品)に軽く湿りを与える

(2)作業台の上に平らにひろげられた本紙に肌裏(最初の裏打ち)を施す
 ※ 肌裏は通常薄い楮の和紙で打ち、接着の強い新糊を用い糊浮きを防ぐ

(3)次の裏打ちを増裏打といい、大きなものでは2度3度と施していく
 ※ 増裏打で厚みや強度の異なる周りの裂地(きれじ)とのバランスの調整をする
 ※ 増裏打の紙は、美栖(みす)紙という白土が漉き込まれた柔かい和紙で打ち、糊は接着力の弱い古糊で柔軟性を持たせる

(4)同様に裏打ちされた裂地を、本紙を周囲に貼る

(5)周囲を切りそろえ、軸装の形ができると、最後に全体を裏打ちする(総裏打)
 ※ 総裏打では、本紙を巻いたり伸ばしたりするための滑らかさをもたせる
 ※ 総裏打の紙は、宇陀(うだ)紙という和紙で打つ